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かみ合わせの大事さと矯正の必要性

かみ合わせは、非常に大切なものです。それは今の時代、食事が柔らかくなって美味しくなってきましたが、この事は、お口の筋肉の退化を意味しています。また、顎の骨も退化します。硬いものを食べていた時代、顎は発達していましたが、今の人たちは、顎が小さくなり、歯並びがすごく悪くなっている方が多くなってきました。

 

歯ならびが悪いということは、本来のかみ合わせの高さが減少することを意味しています。この高さが減少すると下顎が奥のほうにずれてしまいます。そして耳の奥の方へ顎が少しずつずれていきます。

 

そこには何があるかというと、神経や血管が密集しているのです。その神経や血管を刺激することで俗にいう不定主訴が出てくるのです。そして、不定愁訴の1/3は、かみ合わせの高さの減少であるといわれています。

 

かみ合わせの高さが減るということは、歯並びにも関係します。奥歯が斜めになり、その影響が前歯に出てきます。そして前歯の不正歯列が出てくるのです。ですから、矯正治療の本当の目的は、医療的に考えると奥歯の位置をただすこと、正常な位置に奥歯を治すことなのです。皆さんは前歯を気にしますが、本当の原因は奥歯なのです。海外では、すでにいろいろな研究がされていて、歯を抜く矯正治療は否定されてきています。

 

顎関節症もかみ合わせの高さが減少することで起こります。また、1960年頃より行われてきた歯科治療にも原因があります。1960年代は、アメリカの技術を輸入し、実際に使われるようになってきた時代でした。その中でも銀歯の鋳造技術という方法が入ってきました。それまでは、かぶせ物は柔らかいアルミニウム冠で作られていました。このアルミニウム冠は、歯よりも柔らかいので、1日もすれば、すぐにつぶれて歯になじんでいました。そして、この時代には、顎関節症なるものは、ほとんどありませんでした。ですから高くても問題なく慣れると言われていたのです。

 

しかし、鋳造のかぶせ物が出てきてからも、その様な事を言われていたようです。鋳造のかぶせ物はしっかりと作らないといけないので、間接法(模型をとって作ります)で作るのです。(アルミニウム冠は患者さんのそばで歯科医師が作るのです)。そこにズレは許されないのです。しかし当時の歯科医師はその辺のことが解らずに、アルミニウム冠の治療と同じことをしたのが間違いでした。それは、高いけど慣れる、低いけど問題はないなどなどです。そのたびに顎はずれ、究極には顎関節症になるのです。それから年々、不定主訴が増えてきたのです。

 

そのような反省を踏まえて、星川あなん歯科医院では、かぶせ物を作るときは、必ず全体で型を取り、きちんとした材料でかみ合わせを作ります。ですから、私のところでは、高くもなく低くもない、ちょうど良いかみ合わせの歯ができるのです。そしてほとんど調整はしません。かぶせ物を入れてかみ合わせのチェックをして終わりです。それが、1960年代にアメリカから入ってきた鋳造という技法の本来の使い方なのです。

 

話はそれてしましましたが、歯並びが悪いということは、それだけ身体に負担がかかるという事です。ですから、矯正治療をお勧めするのは、このような不定愁訴がなくなるように、歯並びを、抜かないで矯正治療をすることで、解放されると思います(しかし、かぶせ物が多い方は新たなかぶせをしないいけませんが)。そして、しっかりとした治療を受けてもらえれば、大きな問題にはならないと思います。それが医療の本来の姿ではないでしょうか。(ここに書いてあるのは私のこれまでの経験と私の考えなので、日本では学術的にはまだ証明されていません、しかし現実的にはそのやり方でうまくいく方も多いのです。)