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痛いから抜く?

【痛いから抜く】ではなく、原因究明が大事です。

B-1さんのケース

 

これからお話をさせていただくのは、私の患者さんの紹介で来院された患者さんの話です。

 

右下の奥歯が痛むとことで来院されました。よくよく話を聞くと、#47(右下の奥歯)が固いものを咬むと痛みを感じ、冷たいものがしみているが熱いものは問題ないとのことでした。また、以前に知り合いのドクターに見てもらったとの事で、そのドクターは、この痛みが無くならないようであれば、歯を抜いた方が良いと言われたそうです。

 

 

そこでまず私は、全体のレントゲン写真を撮影し、お口の中を全体的に拝見しました。しかし、全体的な写真を見ても全くこの患者さんが言われている症状に合致しませんでした。そして、何か変だなと思い咬み合わせの問診票に再度記入をしてもらいました。

 

そうすると、右下の歯が周期的に咬むと痛くなることや頭痛や肩こりが最近増えたとのことでした。また、食いしばりもあるとの事でした。

 

 

この時点でははっきりとは解りませんでしたが、私の説明は、抜くことは現状から考えて、第一選択ではないとお話しさせて頂きました。そして、知り合いのドクターは痛みがあれば抜くことが良いと言われていたのですが、私は逆に抜くことを証明するような症状がないことなどを考慮して、検査をさせてもらうことにしました。

咬み合わせ検査から原因を探る

多くの歯医者さんの治療は、原因解明ではなく対処療法になっていることが多くあります。

 

痛みが生じた歯だけに注目して、抜いてしまえば確かにその歯に生じていた痛みは消えるでしょうが、根本原因が解決されません。

 

まずはその原因を調べるために検査が必要になります。その上で総合的に判断をして治療方針などを決定していきます。

 

私が咬み合わせに注目した理由は、患者さんが言われた歯に関してあまりにも症状と一致しないことと咬み合わせの症状が出ていることでした。そこでまずは、取り返しのつかないことはしないで、状況を適切に把握することを提案しました。

 

また、痛みというのも時々だったということも理由です。この痛みが通常以上に痛みが出ていれば、歯の神経なり歯を抜くなりを考えましたが。

 

 

検査の結果、右下の歯(右下7番目、8番目の歯)が早期接触と言って、異常な状態で歯が当たることが原因と判断し、まずはマウスピースを作りました。固いマウスピースではなく、柔らかい素材で。このマウスピースを装着して1週間で痛みはなくなりました。ここで初めて確定診断ができました。

 

 

咬み合わせがズレるとその周囲の筋肉バランスが必ずおかしくなります。それは神経伝達のバランスまでもおかしくなってしまいます。ですから、我々歯科医師は、痛みが生じている歯だけでなく、周囲の筋肉や全体をしっかりと検査をすることで、健康な歯を抜かなくて済むのです。

 

そして、常に勉強をしていかないといけないのも歯科医師の仕事です。

 

 

 

歯科医師と歯医者という言葉は同じように扱われていますが、全く別物です。

 

歯医者とは対症療法をする人のことで、歯科医師とは全体的に検査をし判断して科学に基づいて適切な治療ができる人のことを言います。