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矯正治療において、なぜ抜歯をするのか?

皆さん、矯正治療において、どこを抜歯しますか?大体、上下第1小臼歯、第2小臼歯のあたりかと思います。それも4本も。長年、世界の矯正界では抜歯論争が繰り広げられていました。抜いたほうが良いというアメリカ的な発想(早く治るということですが・・・)と抜歯はダメだというヨーロッパ的な発想があり、この論争の結論は出ていません。

 

しかし、現在は異なる考え方も出てきています。それは、根本的に歯並びが悪くなる原因の追及です。ヨーロッパのスラバチェックという人が解明してくれたのですが、最近、解ってきたことです。多くの歯並びが悪くなる原因は、奥歯の萌出力(歯が生える力のことです)だったのです。

 

奥歯の萌出とは、第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯(親知らず)の事です。これらの奥歯が生えてくるときには、前にある歯を押し上げ、さらには骨を押し上げます。さらにはその押し上げる力が、噛み合わせの面を変えてしまいます。これが不成咬合につながっていきます。

 

そもそも、人間の骨格は、状態によって分類されているのですが、その状態によって、歯並びがどのようになるかが決まってきます。また現在、戦前に比べて食事が柔らかく、咬み応えのない食事を続けることにより、歯並びが酷くなることもあります。このような状況下では、歯や口腔、その周囲の筋肉も発達しません。

 

前歯で噛めない人や、反対咬合になってしまう人、出っ歯になる人など様々です。そして、個人個人の骨格によってどういう感じなるかは、決まってきます。

 

 

そのような状態が、エビデンスを伴って説明されてきています。また、今まで抜歯をしていた第1小臼歯、第2小臼歯の歯は、噛み合わせの中心ということも解ってきたのです。 ですので、私どもでは、基本的には、第1小臼歯、第2小臼歯を抜歯せず、万が一抜歯が必要になっても、奥歯を抜歯することをセレクトしています。そして、不正咬合(要は萌出スペースの不足です)の成り立ちを考え推測して、逆の治療を行うのです。このような矯正治療も従来の装置や器具では行えませんでしたが、今の時代の新しい技術を使うことで可能になりました。このように歯科矯正の技術は日進月歩しています。

 

その上、不正咬合の方は、咬み合わせ(顎の状態)もおかしい方も多くいます。かみ合わせに関しては、矯正治療とは別に治療をしないといけないと考えています。すべての事を完全にできることはありませんが、可能な限り努力していきたいと星川あなん歯科医院は考えています。

 

※ 注釈 すべてのケースで100%抜かないのではなく、90%は抜かないということです。どうしても歯が大きすぎて日本人の枠に入らないこともありますので。その時にには患者さんとお話の上で対応するようにしています。