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咬みあわせと矯正治療

歯は、哺乳動物が食事をするための大切なものなのです。歯は、簡単に言うと、顎の骨の中で作られており、身体にとっては、とても大事な組織です。そして、民族の遺伝や家系の遺伝により、身体が作られます。

 

基本的に身体は、民族によりある程度一定していますが、実は歯も同じです。そして、歯は必ずその身体に適した位置に並ぶように作られています。

 

不正咬合は、人間が生まれてからの周囲の環境により、顎の骨が変化することで生まれてくることが、多々あります。転んだり、何気ない癖やしぐさで、変化します。歯は変化しませんが、骨が変わってくるのです。それと共に歯の位置も変わってきます。これが不正咬合だと言われています。

 

 

歯科医師の間でも歯を抜く・抜かないという論争がいつでもありますが、何故このような論争が起こるかというと、咬みあわせをうまく作るために起こるのです。

 

前歯の誘導を、アンテリアガイダンスといいますが、これは咀嚼という動作をするときに大事になるのです。人間の歯の目的は、1本1本で作られているわけではありません。お口全体として、脳との関連により、咀嚼という難しい作業が行われています。このときに大事なのが、アンテリアガイダンスになるのです。

 

 

特に糸切り歯(犬歯)といわれている歯が大事で、この歯がうまくかみ合わせができることにより、脳と連携して、無理な咬み方をしなかったり、異常な力を抑えることができます。

 

この犬歯をきちんと噛ませることが出来るかという点を考慮して、抜歯か非抜歯かを決めるのです。レントゲン上でのみの診断は、間違いを起こすことになります。
 

 

横浜あなん歯科医院では、できうる限り非抜歯で治療をしていますが、必ずしもそれが良いとは思っていません。多少の歯のディスキング(歯の両側を少しだけ削る治療行為です)を行います。それだけで抜かなくてすむことが多々あります。

 

また、歯を抜くことで、矯正治療後、顎関節症が生じている方もいます。有名な先生が治療をしたからとか、安いからとか、いろいろなことを言う方もいますが、あまりにも抜く治療が多いのも事実です。今、アメリカでは、昔ほど歯を抜かないそうです。

 

 

そして、一番の問題は、顎の状態がずれていることが多々あることです。

 

矯正治療をするまでに、あるいは、外部環境によることで、身体が変化して、咬めるところで咬むようになるのです。顎をずらしても、身体は代償的に、人は気づかずに変化していくのです。

 

これが一番怖いです。歯が咬む位置と顎が平衡を保つ位置が必ずしも一致しているとは限りません。これがずれていると、後戻りや歯の崩壊が始まることが起こる可能性があります。これはすぐに起こることもあれば、10年後20年後に来ることもあるのです。

 

本来は、いつもの咬む位置と筋肉位が一致することが大事なのです。

 

 

抜歯、非抜歯に関しては、今すぐの簡単さではなく、なぜ不正咬合になったのかという視点で体全体のバランスを観て、長く安定したかみ合わせにとってベストな治療方針として考えることが最も大切だと考えています。