先日、患者さんと話をしていて、『先生のところの銀歯はまったく調整がないのですね』といわれました。
これまでその患者さんが通ってい歯科医院では、必ず調整を重ねて銀歯などを入れていたようです。
実は、ドクターサイドの仕事と技巧サイドの仕事が、お互いにしっかりとして、きちんとした模型を作り、咬み合せをしっかりと取れば、ほぼ調整することはありません。
しかし、現実的にはなかなかこのパートナーシップと技術がおいついていないケースが多いということが言えます。
その原因として、特に保険診療の技巧料金はとにかく安いことが考えられます。歯科技工士さんが、職人的に作っているものが安くたたかれてしまっているのも事実です。多くの歯科技工士の方が、朝8時から夜12時ぐらいまで仕事をして、1ヶ月の給与が25万程度なのです。
今、日本人は安い者を、好む傾向になりました。確かに、工業製品なら、安くできることが多いです。しかし、特殊部品はどうでしょう?新幹線に使うものや、人工衛星などは全て、職人による技術の集大成なのです。
人間のお口の中も、患者さんの口の中は全く違いますし、症状もそれぞれ全く違います。それぞれの状況に合わせた技工物をしっかりと作るには歯科技工士である職人さんが作るものでないとフィットしないのです。
キャドカムやAIなども発達いますが、まだまだ職人の技術に頼らないといけない部分であります。
また、保険診療では、売り上げがなかなか上がらないという構造も問題となっています。歯科治療は、一人ひとりに合わせて、オーダーメイドの治療なのです。数をこなすということは、治療の精度を落とすことになります。
このような状況では技工士の方が勉強したいと思っても、時間もお金もなく、将来的に患者さんが損をすることになってしまいます。技術は1日で作られるものではありません。
また、技巧学校の入学者も今ではかなり減っているようで、大きな技巧学校が閉鎖というニュースが先日もありました。
今、AIとかコンピューターが発達してきていますが、熟練した職人が作るものは、オーダーメイドの最たるものなのです。こういう人たちを守ってあげないと、歯科の世界は終わってしまいます。そのようなことは、食い止めないといけないと思っています。
優秀な技術を持つ人を守るのも我々の仕事です。お金で、人間の健康は買えないのです。人間を守れるのは結局、人間だけなのです。そして特殊な技術を持つ技工士人たちや歯科医師が、お口の中を守れるのです。
人間は機械やロボットではないのです。
皆さんのご理解がいただければと思います。